誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



什の掟という響きを、斎藤は懐かしく思った。


会津生まれの母か伯父か祖父母か、誰から教わったのか記憶が曖昧だが、会津訛りの易しい言葉で説かれる七つの教訓を、確かに斎藤は知っている。



会津では皆、什と呼ばれる地域の共同体の中で固く結束し、什と什とが協力し合って藩全体でまた固く結束する。


会津に育つ子供は誰もが、什の掟によって、礼儀と規範を学ぶのだという。


什の掟とは、と新撰組の面々に語り聞かせようとした容保公の声に重ねて、斎藤は覚えず、それを口ずさんでいた。



「一つ、年上の人の言うことに背いてはなりませぬ。


一つ、年上の人には御辞儀をしなければなりませぬ。


一つ、嘘を言うことはなりませぬ。


一つ、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ。


一つ、弱い者をいじめてはなりませぬ。


一つ、戸外で物を食べてはなりませぬ。


一つ、戸外で女と言葉を交えてはなりませぬ。


ならぬことはならぬものです」