誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



頭を下げんばかりの容保公に、永倉が色を失い、原田が慌て、斎藤はただ圧倒されていた。


人の上に立つべき者とはこういう御方のことなのだろうと、胸にすとんと落ちた。


近藤も土方も、前に立って引っ張る人間であって、上に立つ器とは違う。


それが今、はっきりと理解できた。



誰からともなく平伏すと、容保公はまた笑いながら、顔を上げよと言った。



「覚えておいてくれ。儂は、話をすること、知ることから全てが始まると思うておる。


会津藩主松平容保という人間は、会津という存在と話をして深く知っていく上で、形を持った。儂は会津の生まれ育ちではないのだ。


なればこそ、義と理と忠誠を重んずる会津藩家訓、日新館の什の掟【じゅうのおきて】を尊しとして、必ず忠実に守らねばと自らを律している」