誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



京都の秋は紅葉が見事だと讃える声もあるが、実際のところは、秋と呼ぶべき過ごしやすい涼気の季節は存在しないに等しい。


夏の尾を引いた蒸し暑さの中を、斎藤は永倉たちに連れられ、会津藩が駐屯する黒谷【くろだに】の金戒光明寺【こんかいこうみょうじ】へ赴【おもむ】いた。



会津藩士たちはいくぶん疲れ気味に見えた。


雪深い代わりに夏は涼しいという故郷を離れて京都の暑さにやられ、長州藩を中心とする敵と渡り合い、先月の戦闘と火災の後は荒廃した市中の復興に奔走している。


おまけに、主君の容保公も半年来、体調を崩している。


無理に起き出して仕事をしてはまた熱を出したり食事を受け付けなかったりと、ろくに休まないから治るものも治らないのだ。