誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



そうか、この不和は、土方が筋書きを作る速度が今の状況に追い付いていないせいだ。


今の近藤は、武田あたりが用意した稚拙な筋書きを採ってしまっている。


試衛館の面々から見れば新参者で頭でっかちの武田は、近藤を中心に集まった本来の面子の性質をわかっていない。


だから、不和が生じている。



一夜、斎藤は土方に呼ばれた。


端正な顔立ちをして、振る舞いもどこか洒落ている土方は、花街と市井とを問わず女に持てる。


土方の凛として冷たい目に、女は色気を感じるのだという。


斎藤には、その色気とやらは少しも理解できないが、迫力と言い換えるならよくわかる。


掛け値なしの現実と少し先の将来を見据える土方のまなざしの正確さには、ほかの誰にもない迫力がある。