近藤隊の一員として池田屋に突入した藤堂は、ずれた鉢金【はちがね】を直す隙を突かれ、無防備に晒【さら】した額を負傷していた。 今、藤堂の額にあるのは、鉄の板を仕込んだ黒い鉢金ではなく、幾重にも巻かれた晒木綿【さらしもめん】である。 白々としたその色は、暗がりに慣れた夜目に、奇妙に不吉に浮かび上がって見えた。 「傷は、いいのか?」 「寝たっきりになるほどの大怪我じゃねえさ。だいぶ血みどろになっちまったが、まあ、もともと血の気が多いたちなもんでね」 「無理をしているくせに」