誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



「来た」



斎藤は短く告げ、冷えた左の手のひらに息を吐き掛けた。


一度、拳を握って、開く。


体はしなやかに動く。


心は凝り固まって動かない。



藤堂たちが、横たわる伊東を見付けたらしい。


足音が真っ直ぐに駆け寄って来る。


罠だと察しているだろうか。


卑劣だと、伊東が最期に言ったように、藤堂の口からも罵【ののし】られるだろうか。



斎藤は唇を噛んだ。


舌先に血の味が滲んだ。


甘くて塩辛い。


こんな小さな痛みの感じ方は、とうに忘れた。


惨劇が間もなく幕を開ける。


斎藤は、刀の柄に左手を掛けた。



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誠狼異聞
―斎藤一、闇夜に駆けよ―




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インディーズ出版レーベル【出版サービスWille - ヴィレ】さんより、冊数限定の企画誌として2016年7月発刊予定。
企画誌版には、ページ数の関係で「五 会津藩主」が入りません。
表紙と扉絵が付きます。

明治に入って斎藤が東京で高木時尾と結婚して幸せになるまで、短編(鳥羽伏見の戦い~甲陽鎮部隊編、会津~斗南編)に分けて書き進めたいと思っています。

(2016.06.05)