誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



空気が冷たい夜には星明りが鋭く明るいと、十年近く前、山南に教わった。


あのときは、確か日野宿での出稽古の帰りで、目付け役の山南のほかには、斎藤と藤堂と沖田の若い三人が並んで歩いていた。



天の川の形は、江戸で見ようが京都で見ようが同じだ。


濃紺の天空に懸かる眩しいような白い流れから、斎藤は目を背け、うつむいた。



星の光は変わらない。


人は変わっていく。


あるいは心変わりのない者がいたとしても、周りが変われば、結局は影響を受けずにはいられない。



闇の向こうから足音が聞こえ始めた。


まだ少し遠い。


息を殺して、耳を澄ます。


駆ける足音が近付いてくる。


毬【まり】のように弾んで俊敏なあの足音は、藤堂だ。