伊東は斎藤を見上げていた。
苦痛の表情が次第に緩慢になっていく。
暗がりの中、伊東が吐き出す息が、白くせわしなく漂う。
あっけないと思った。
実際に伊東を殺す場面になれば、途方もなく悲しかったり苦しかったりするかもしれないと想像していたが、どうということはない。
左手で刀を抜くときの斎藤は、心など失っている。
人の死を平然と見据えていられる。
伊東がかすかに唇の端を持ち上げた。
「いくらなんでも、卑劣に過ぎるぞ」
かすれる声がそう言ったように聞こえた。
伊東は、がくりとのけぞって、そのまま動かなくなった。



