誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



「これは……こんな冗談をやらかすものではないだろう、斎藤……」



息を切らせた伊東が、傷を押さえて顔をしかめ、その顔で笑った。


斎藤は刀を抜いた。


永倉も原田もほかの隊士も、各々の得物【えもの】を手に、伊東を取り囲む。


伊東はじりじりと後ずさり、本光寺の門前の台石に踵【かかと】を引っ掛けて、そのまま後ろざまに倒れた。



「冗談はよしてくれ……私は、ただ……」



斎藤は一歩、伊東に近付いた。


だらりと崩れた伊東の右肩は、骨が砕けているに違いない。


喉にも裂傷があるのがわかる。


噴き出す血の量が尋常ではない。


伊東は間もなく死ぬ。