誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



宴はやがて御開きとなった。


伊東は、来たときと同様、一人で帰路に就いた。


が、いくらか酔いの回った足取りで歩いたのは、半町ほど(約五十メートル)に過ぎなかった。


油小路の暗がりの板塀の向こうから、突如として槍が繰り出された。



右肩を貫かれた伊東が苦痛に悲鳴を上げた。


仕損じた、と槍を繰る大石鍬次郎が舌打ちをしたとき、斎藤は既に板塀を越えて油小路に降り立っていた。


永倉、原田が続く。



伊東はよろめきながら、ひとけのない油小路から脱出しようとする。


斎藤は足音もなく駆け、伊東の正面に回り込んだ。


本光寺の表にともされた細々たる明かりが、斎藤と伊東を対面させた。