誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



勝が、斎藤の差し向かいで、にやりとした。



「困るなあ、斎藤。女の体に逃げることを覚えた今のおまえさんじゃあ、気配が消せねえ。崩れた色気が駄々洩【だだも】れなんだよ。ちったぁ自覚しろや。


間者であり続けるのが性に合わねえんなら、さっさと決着つけちまうことだな。伊東をおびき出して殺すんだろう?」



「……頭のいい人だと思う。ただ、あの人は、手を組む相手を間違えた」



「一和同心かい。


公家中心の合議制に徳川家も加えて、公武が共に政治を動かす。国民皆兵で軍制改革をして、大開国による大強国の実現。これからは英語の時代だと、辞書を買い込んだりしている。


確かに、伊東の発想は悪くねえ。伊東という男の人柄も悪くねえらしいな。まあ、新撰組との相性だけは最悪だ。出会っちまったのが運の尽きさ。御愁傷様だ」