誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



つまるところ、自分はどこへ向かっている何者なのだろうか。


今、何のために武田を殺したのだろうか。


まだ温かいであろう武田の死体を見下ろし、左手に残る斬撃の感触を、ぼんやりと見つめる。


疲れている。


人を斬れば、どうしようもなく疲れる。



「斎藤」



ぴんと張り詰めた声で、永倉が呼んだ。


斎藤は顔を上げた。


永倉は、表情豊かによく動く眉を、どこかが痛むかのように、ぎゅっとしかめた。



「なあ、斎藤よ。一【はじめ】ってのは、おまえに似合いの名だと思うよ。おまえの気性は一本気だ。


なのに、妙な方向に能力を発揮するもんだから、表と裏の顔なんぞ使い分ける羽目になる。似合ってねえよ。あまり無理をするな。


俺は、一の名が似合うおまえのままでいてほしい。餓鬼の頃からずっと見てきたからさ、おまえにも平助にも変わらずにいてほしいってのが本音なんだ」