斎藤は、かぶりを振った。
死んだ心を映す目も、静けさと熱を内包して矛盾する剣技も、不思議ではない。
そのままの自分だと、斎藤だけが知っている。
十九の頃、勝海舟に見出されてしまわなければ、矛盾せずに済んだのだろうか。
苛烈な声を上げながら熱い剣を振るうことができただろうか。
いや、もしも勝の走狗とならずとも、両手の剣技を使い分ける斎藤は結局、今まさに武田を殺したように、近藤や土方によって間者の役割を与えられたはずだ。
あるいは、二重三重に偽りの身の上を抱え込むという矛盾がなければ、
斎藤の剣は、相対する者にとって不思議ではあり得ず、実戦で一番強いなどと称されることもなかったかもしれない。



