誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



六月、土方に指定された日の夜、洛中から伏見へと伸びる竹田街道の銭取橋で、斎藤は武田を斬った。


近藤や土方の信用を失っていた武田は、その口のうまさを駆使して、倒幕派の急先鋒である薩摩藩に近付く様子を見せていた。


新撰組において裏切り者に下される罰は、死である。



一刀の下に武田を屠【ほふ】った斎藤の方へ、人影が明かりを手に、すいと近付いてきた。


夜目の利く斎藤は、瞬時にそれが新撰組二番隊組長の永倉新八であることを見抜いた。


永倉は、斎藤の事情を知っているらしかった。


御陵衛士と行動を共にしているはずの斎藤がそこにいて、土方の命じた暗殺を実行した現場を目にしつつ、平然としている。