誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



勝は鼻で笑った。盃の酒が、ぐいと飲み干される。



「やけっぱちになっちまってるのかねえ? 藤堂平助や伊東甲子太郎を裏切るのが、そんなに苦しいか? 武田観柳斎のときでさえ、勝手が狂っちまったみてえだしな。


なあ、あの夜、銭取橋【ぜにとりばし】の上で永倉新八と立ち話をしてたようだが、何を話してたんだ?」



「なぜ、そこまで……」



「俺がおまえさんについてどれだけ知ってるかって?


おまえさんは俺にとって、京都で一番優秀な間者だが、おまえさんひとりじゃ情報が足りねえ。ほかにもいろいろ子飼いがいるわけさ」