前回、吉田道場へ報告に行ったのは、いつだっただろうか。暑い時期だった。
そうだ、高台寺へと拠点を移したことを志乃に話した。
その後は一度も、もう四箇月近く、勝海舟の存在を頭から追い払っていた。
そうでもしなければ、勝の走狗【そうく】であることを土方に隠し、土方の密偵であることを御陵衛士に隠し、幾重もの偽りを纏【まと】う斎藤は、自分が何者なのかを完全に見失ってしまいそうだった。
立ち尽くす斎藤の胸倉を、勝は無造作につかまえて、ぐいと引き寄せた。
「酒でも奢ってやるよ。ちょいと話をしようか。何、時間はそう取らせねえさ。夜が明ける前に、おまえさんの馴染みの店まで送ってやらあ」
口数の多い勝は、よく笑い、すぐに熱くなり、少しもじっとしていない一方で、眼光がひどく冷たい。
命令一つで大勢の人間の命運を決することのできる政治家の、人斬りよりも一段と冷酷な目だ。



