誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



土方の指示がなければ、いくら斎藤でも、御陵衛士という火種には関わらなかった。


土方の指示一つで御陵衛士の殲滅作戦が開始されることを、斎藤は知っている。


作戦に用いられる情報は、斎藤が土方にもたらしたものだ。


作戦決行の当夜には、斎藤は新撰組の側に戻って、御陵衛士の面々に剣を向けなければならない。



付き合いの長い藤堂のことも、思慮深い伊東の人柄も、嫌いではない。


斎藤はたぶん本当は、人というもの自体が嫌いではないのだ。


嫌いなものを斬るのならば、躊躇は皆無だろう。


嫌いではないものを斬らねばならぬから、いつの間にか体の内側に澱【おり】が溜まっている。


それを吐き出すかのように、茶屋通いがやめられない。