誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



「まあ、難しくはあるよな。相手が自分より弱いとわかってりゃ、話なんか聞いてやれるかって、そんなふうに思っちまうのが人間の情けないところだ。


それでも、やっぱり、斬らずに済むなら斬りたくねえ」



「会津の殿様が言っていたことと、少し似てる。あの人は、新撰組が生意気を言っても、聞いてくれて、怒らなかった。


話を聞くだけでどうにかするって、刀しか知らない俺には思い付きもしない案だ」



「思い付かなくても、聞いて納得できりゃ上等だろ。


俺は伊東さんに付いて行くよ。近藤さんたちの後ろを走ってたんじゃ見えねえものが、伊東さんの近くにいたら見える。


俺が見たかったもの、つまり何のために自分が戦うのかって、その理由や理想が、ここにいれば見えるんだ」