誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―



一和同心の伊東に、藤堂は傾倒している。


どうやったら一和同心を実現できるか、その持論を伊東が語った日、斎藤は、藤堂平助という人物の一番正直な部分を知ったように感じた。


剣術稽古が好きで、荒っぽいところのある藤堂だが、本当は争い事を憎んでいる。


人殺しを重ねてきたことに苦悩している。


人が人を殺さずに済む道を、心の底から望んでいる。



「対話、か」



「藪【やぶ】から棒にどうした、斎藤? 対話?」



「伊東さんが、大事にしていること」



ああ、と藤堂はうなずいた。


刀を持ち出す前に、とことん話し合うべきだと、伊東は言った。


倒幕派と佐幕派も、藩同士の競争も、日本と諸外国も、対立関係にある者たちは全て、まずは互いの話をよく聞いてみるべきだ。