前年十一月に屯所に合流した伊東は、快活で聡明な弁舌を披露し、新撰組の面々を圧倒する一方で、それまで親交のあった人々とは全く毛色の違う武辺者の集団の中で戸惑ってもいた。
藤堂あたりは知らないだろう。
土方に指示されて伊東を観察していた斎藤だから、伊東の孤独を知っている。
ぽつねんとして書を読み解いていた伊東に声を掛けたのは、同じく読書好きの山南だった。
誰の詩が好きなのかと、その山南の問いを受けての伊東の答えは、斎藤の全く知らない名だった。
が、山南はよく知る唐代の詩人だったようで、たちまち意気投合した二人は、新撰組の屯所には不似合いの話題に花を咲かせた。



