藤堂の語るこれからの日本の想像図を、斎藤は既に、数え切れぬほど幾度も聞かされて知っていた。


勝海舟がよく似たことを語る。


学識も権力も一切持たない斎藤に懇切丁寧に語ったところで何の益にもなるまいに、勝はとにかく語ることが好きで口数が多い。


あいつらはこう言う、そいつらはああ言う、でも俺はこう考えていると、吉田道場で勝と会うたびに、あらゆる陣営のあらゆる思想を一方的に教えられる。



「伊東さんは、本当に頭がいいんだな」



斎藤はぽつりと言ってみた。


伊東の採る案は、勝のそれとよく似ている。


勝は日本で一番頭が切れる男だから、似たようなことを考えている伊東も賢いに違いない。


正しくて新しいことを、自信を持って発言しているに違いない。



藤堂は、おまえも見る目があるじゃねえかと笑って、斎藤の肩口をばしばしと叩いた。