藤堂は伊東の理論の性質そのものが好きなのだろうと、斎藤は思った。
藤堂は、じめじめと内に籠【こも】るのが嫌いで、ぱっと開けてわかりやすい話が好きだ。
少人数でこそこそと秘密を共有する空気が嫌いで、皆が一堂に会する賑やかな場が好きだ。
だから藤堂は、外国に対して閉じ籠って威嚇【いかく】するより、いっそのこと開港して貿易して対等に渡り合ってやろうじゃないかと、そんな考えに惹かれる。
武家だ公家だと細かくこだわり続けるよりも、横並びで集まってみたら新しい議論ができるんじゃないかと、そんな伊東の言葉を支持する。