夜半過ぎである。 黒々とした鴨川【かもがわ】の水面を、斎藤一は見下ろしている。 何を見ている、というわけでもない。 音ばかりは涼しげに流れる川の、時折ちらりと反射する星影を、ただ視界にとらえながら、三条橋のたもとに佇【たたず】んでいる。