反対言葉。

乱暴な言葉とは裏腹に、その声色は驚くほど甘やかだ。


「お前はうちの経済にくる選択肢しかねえんだよ」


――頑張れ。


そう、聞こえた気がした。


「一、二年でしか受けられないやつのノートはまとめといたし、テストはしょうがないから教えてやる。教科書も使わないやつはやるよ。それで、」


電話口で微笑む気配がした。


「俺、結構不真面目でな」

「高良さんはいつだって不真面目です」


ダメだ、なにか反論しないとダメだ、なんだか大声をあげて泣いてしまいそうでいけない。


「一、二、三年のどこかで受けるって決まってる講義、三年で受ければいいやと思って、受けてないのあるんだよ。てかほとんどだけど」

「やっぱり不真面目じゃないですか……」

「言ってろ」


高良さんもそれは分かっているのだろう。


茶化さずに、わたしの喉が詰まるのを流してくれた。


穏やかな語り口に大体何を言われるのか想像がついて、わたしはいっそうにじむ視界に唇を噛み締めた。


せめて、泣き声だけは、上げないように。