反対言葉。

高良さんの案内による校内巡りは、思いの外楽しかった。


まだどの学部にするか決めていないと告げると、笑われるかと思ったのに「そうか」の一言で、取り繕われるよりずっといい待遇だった。


わたしがそんな体たらくだからだろう。


高良さんは時間をかけて校内を隅々まで回ってくれ、おすすめのポイントも含めていろいろと説明してくれたんだけど、わたしが考えていたより早く終わった。


たぶん、一番効率よく回れる順序にしてくれたんだろうな。


「雑草」

「はい」


歩き疲れただろうと、校内にいくつか設置されているうちの、静かなベンチに並んで座りながら、少し休憩をしていたときのこと。


「お前、俺と連絡先交換する気はあるか」


いやこの人、今なんて言った?


「……はい?」


嘘だと、聞き間違いだと思って聞き返す。


固まるわたしに、ご丁寧に画面を明るくしてからメッセージアプリのコードを見せて、高良さんは実に強気に笑った。


「俺と連絡を取る気は、あるか」


いや、え?