反対言葉。

「紅茶の次に好きな飲み物ですよ。あの……?」

「お前の家にコーヒー淹れる一式はあるか。ミルとか」

「一応、母のものがありますけど……」


見上げた視線には答えてくれずに、質問を重ねた高良さんはわたしの手からクッキーの箱を抜いた。


「こっちにしとけ。カフェイン摂取して夜も頑張って勉強しろ、受験生」


それは言外に子どもと言っているのは明白で、押しつけられたコーヒー豆の缶をしぶしぶ受けとる。


「わたしはクッキーも食べたいんですが!」

「クッキーはさっき食べただろ」


……え。


「これはうちの学校のカフェテリア共通のコーヒー豆な。安いやつだけどそんなに変な味の豆じゃないし、日持ちする。土産にはちょうどいいと思うんだけど?」


本当はドリップコーヒーとかインスタントコーヒーとかが簡単でいいんだろうけど、売り切れみたいだからな。


そう続いた提案に、わたしは黙りこくってうつむいた。


ああくそう、嫌がらせとかからかいとかだと思ったのに違うなんて、本当ずるい人だ。


普段からあるものなら、確かにクッキーよりコーヒー豆の方が条件がいい。


クッキーよりコーヒー豆の方が随分いいお土産で、しかもクッキーはさっき食べてるときた。


不意に上がった体温は、押し込まれたクッキーを思い出したからだと心中必死に言い訳をして、わたしは懸命に思考をとめた。