反対言葉。

「で、何が聞きたいんだ」


シャーペン片手に意気込むわたしへ、クッキーを食べながら高良さんが問いかける。


「あ、ええと、学校の課題で、最低一人にインタビューしなきゃいけなくて。項目は決まってるんですけど」

「うわ面倒くせえ」

「すみません……」


答えるの嫌かな、そうだよね、どうしよう。


意気消沈したわたしに、高良さんは首を振った。


切れ長の瞳が少し優しくなる。


「違う、そんな課題出されて大変だなって意味だよ。ちゃんと答えるから安心しろ。俺の言い方が悪かった」


ごめんな、と。


至れり尽くせりな高良さんは、からかってくるくせに、わたしを雑草だなんて呼ぶくせに、……どうしてこうも、優しいんだろう。


どうしてこうも、わたしを苦しくさせるんだろう。


「雑草? 質問は?」

「あ、はい。『何学部ですか』」

「経済」


経済、っと。


へえ、経済かあ。似合うな。確かに好きそうだ。


「『どういう講義がありますか』」

「金のありがたみ」

「…………」


白い目を向けるわたしに、高良さんは悪びれずに言った。


「講義名言っても参考にならないだろうしな……何だろうな、んー……基本、金のありがたみの話かな、って思ったんだよ。怒るなよ」

「…………」


なんて人だ。


とりあえず答えの通りに書いているけど、これを見たら先生に怒られそうでならない。というか絶対怒られる。


そのあともふざけてるのか真面目なのか定かではない回答が続き、わたしは真剣に、先生に怒られたら高良さんを恨もうと思った。