反対言葉。

紅茶をもう一口飲んで、深呼吸もする。


その間に彼は口に向かって戯れに弾いたクッキーを豪快に嚙み砕き、涼しい目元をこちらに合わせて頬杖をついた。


「俺は一年の高良。お前は?」

「佐草結衣(さくさ ゆい)です。高三です」

「はっ、雑草なんてお前にぴったりじゃんか」

「違います!」


わたしは記名したレポート用紙を鞄からひっつかんで名前の欄を見せつけるように示したけど、笑って全然取り合ってくれない。


「それくらい漢字見せられなくても分かるわ、あほか雑草」

「……失礼ですねええ……!」


分かるということは、佐草と書く、つまり草しか出てこないと把握していながら、わたしを雑草雑草呼んでいるということに他ならない。


なんだ、あれか。草って入ってたらなんでも雑草なのか。


草薙(くさなぎ)さんとか日下部(くさかべ)さんとかみんな雑草呼びするのか。しないだろう。


絶対ばかにしてる……! そのうち佐草って呼んでもらうんだから……!!


わたしは不機嫌に決意したのだった。