「そぉかよ」
あまりにあっけらかんと言うモノだから、俺は驚いて聞き返す。
「えっと……それだけ、なんですか」
「文句あんのか?」
文句などはない。わざわざ藪をつついて蛇を出すなんて馬鹿らしいから。
でも『なぜ?』という思いが強かった。
俺の心を読んだかのように会長が口を開く。
「わざわざ追うなんて馬鹿らしいだろぉが。お前にそんな価値もねぇしなァ」
嫌味のようだったけれど先ほどの言葉とは違い冷たさはあまりなかった。
あえて言うなれば、冷たく突き放すことで俺の背中を押してくれているような言い方。
「何呆けてやがる。俺の考えが変わるかもしれねぇだろぉ?」
「は、はい」
思わず震えた声。
「行くぞ」
祐一郎がこちらに手を伸ばしてくる。けれどその手をとることにためらいが残った。
俺が大切なのは祐一郎。その答えは変わらない。
でもここで俺がいなくなったなら、会長はどうなるんだろう。
俺と婚約したから次期当主になる権利を得たのだ。だとすれば……
「か、会長。俺がいなくなったら、会長は……」
そこまで俺が言うと会長は大げさにまゆをひそめた。
「テメェに心配されるほど俺は堕ちちゃいねぇんだよ」
ニヤリという笑いではなくただ微笑んだ会長を見て俺は今度こそはっきりと言う。
「は、はい! ありがとうございました」
そしてそのまま俺は祐一郎の手をとり窓から外へ飛び出した。
あまりにあっけらかんと言うモノだから、俺は驚いて聞き返す。
「えっと……それだけ、なんですか」
「文句あんのか?」
文句などはない。わざわざ藪をつついて蛇を出すなんて馬鹿らしいから。
でも『なぜ?』という思いが強かった。
俺の心を読んだかのように会長が口を開く。
「わざわざ追うなんて馬鹿らしいだろぉが。お前にそんな価値もねぇしなァ」
嫌味のようだったけれど先ほどの言葉とは違い冷たさはあまりなかった。
あえて言うなれば、冷たく突き放すことで俺の背中を押してくれているような言い方。
「何呆けてやがる。俺の考えが変わるかもしれねぇだろぉ?」
「は、はい」
思わず震えた声。
「行くぞ」
祐一郎がこちらに手を伸ばしてくる。けれどその手をとることにためらいが残った。
俺が大切なのは祐一郎。その答えは変わらない。
でもここで俺がいなくなったなら、会長はどうなるんだろう。
俺と婚約したから次期当主になる権利を得たのだ。だとすれば……
「か、会長。俺がいなくなったら、会長は……」
そこまで俺が言うと会長は大げさにまゆをひそめた。
「テメェに心配されるほど俺は堕ちちゃいねぇんだよ」
ニヤリという笑いではなくただ微笑んだ会長を見て俺は今度こそはっきりと言う。
「は、はい! ありがとうございました」
そしてそのまま俺は祐一郎の手をとり窓から外へ飛び出した。