何とかマンションの3階の寮とされている部屋にたどり着いた。

何年ぶりに本気で走っただろう。
息が異常に切れている。

鞄の中から部屋の鍵を急いで取り出して開ける。

ガチャリ!

扉を開けると目の前に、黒髪ロングの女が廊下に寝間着で立っていた。

「あい。おつかれ。」

黒髪ロングの女は、あいの表情を見て聞く。

「どうしたの?何かあった?」

あいは、女を見ながら強張った表情で言う。

「あさみ…女の子がいた…」

あさみと呼ばれた黒髪ロングの女は、よくわからないという表情で、あいを見る。

「赤いワンピースのオカッパの女の子…」

あさみは、あいに近寄り聞く。

「どこに?」

「すぐそこの陸橋の下…」

「えっ?今?」

「うん…」

あさみは半信半疑でとりあえず、あいを家の中へと導く。

リビングに行くと、テレビの前にもう一人女が座っていた。

「あっ!あい、おつかれ!」

カナという女だ。
彼女も『ビリーブ』で働いている。

「どうしたの?」

あさみが、あいを抱えながらリビングのソファに座らせる。

あさみがカナに言った。

「何かわからないけど、恐がってる。」

カナは立ち上がり、あさみに聞く。

「恐がってる?」

あさみが言う。

「そこの陸橋の下にオカッパの女の子がいたって…」

カナは訝しげな表情をすると、ベランダに向かって行った。

カーテンをおもむろに開けると、ガラスドアを開けてベランダに出た。
体を突き出すようにして陸橋の方を見た。

「何もいないよ?」

夜が明けはじめて陸橋のシルエットもはっきり見える。
当然女の子がいたら見える。

カナは、部屋に戻ると言った。

「幽霊かもね?」

あさみが怒って言う。

「冗談でも言っちゃいけないよ‼」