あいは、自分の顔が男達にモテるのを知っている。
この業界も、もう5年を越えた。16歳の時から、顔と喋りでお金を稼いできたと云う自信に溢れていた。

「あいちゃん!」

向かった先の席の常連客が声をかける。

「指命ありがとうございます。」

そう言いながら、あいは客に寄り添うように白いソファに座る。

「今日は、お一人ですか?」

客は頷き答える。

「あいちゃんに会いたくて一人で来ちゃったよ。」

「そんなこと言って、どこか違うところで飲んでたんじゃないですか?」

客は、酔っ払っているようだが少し気まずそうな顔をする。

あいは、周りの客を軽く見渡す。

三人客のテーブル盛り上がってるな…

あの客、あの子がタイプなんだ…

今、カラオケ歌ってる客、音痴だな…

なんて事を考えながら、隣の客に言う。

「あい、寂しいな…」

客は、あいの下を向いた顔を覗き見ながら聞いた。

「どうしたの?」

「だって、あんまり来てくれないんだもん…」

客は、ドキマギしているのが表情でわかる。

「これからは、出来るだけたくさんくるから!今日はお詫びにたくさん飲んでよ!」

あいは、引っ掛かったと思った。

「ほんとに?」

「うん、たくさん飲んで。」

この客が、金はたくさん持ってることはだいぶ前から気づいていた。
この言葉で今日のノルマは安泰だ。
名前も覚えていない30代半ばのジジイが今日はカモネギになってくれた。

あとは、出来るだけ喋らず、顔を見ず、延長させて、稼ぎを増やすかだけ考えたら良い。

トイレに立ったり、カラオケを歌わせたり、ボーイと連携して席を立って時間稼ぎをすれば良い。

あとは、自分自身がどれだけ高い酒をたくさん飲むかだけ。