賢人達は、朝食をとり終わると店を出た。

賢人のヘルプをしていた若い男が店をでるなり言った。

「そう言えば、賢人さん聞きました?」

賢人は、爪楊枝をくわえたまま言った。

「なにを?」

若い男は言う。

「店に最近、女の子の幽霊を見たって客がいるの。」

賢人は、薄く笑うと言う。

「なんだそりゃ?」

若い男は、賢人の真横に小走りすると言った。

「賢人さんの客も何人か言ってましたよ?蘭丸さんも見たって言ってましたけど…」

蘭丸というのは、賢人が働いている店『ライム』の人気ナンバー2だ。

賢人は笑いながら言う。

「蘭丸が見たって?そんなの初めて聞いたぜ?」

他の若い男達も賢人に口々に言う。

あの客が見ただの、どのホストが見ただの、誰々が言っていただの、賢人はニヤニヤしながら聞いていた。

そして、ヘルプの若い男が言った。

「賢人さんには言いにくいんですけど…」

真顔の男を見て、賢人の表情は少し恐い顔になる。

「その女の子が、賢人さんの近くにいるって話なんですよ…」

賢人は、その言葉を聞き怒ったのか声を荒げて言う。

「そんわけねーだろ!」

賢人は、脳裏にいろんな事がフラッシュバックする。

今では隠しているが、何人かの女性に堕胎させたことや、女子中学生をレイプしたことがグルグルと巡った。