「日向、これ読んだことあるの?」
日向はふるふると首を振る。
本人も読んだことがないこの中身を、あたしはすべて目を通さなければならないらしい。
たしかに、興味がないといえば嘘になる。
日向のことを知れるならなおさら。
けれど、これまでさまざまな研究で数多くの資料に触れてきたあたしでさえ、ここまでひとりの人物について書いてあるものは珍しいと思うのだ。
日向はいったい何者なんだろう。
……まあでも、寮に無事たどり着かなければこれを読むことも出来ない。
「とりあえず道があるところに出ないとだよね。こんな暗いなかじゃ動くのも危険かもしれないけど、もう少しだけ歩こう」
「……花乃香」
日向を抱き上げながらそう言うと、ふとこちらに目を向けた律くんがなにかに気づいたように近寄ってくる。
え? と思ったのもつかの間。
「……気付かなくて悪かった」
ひょいっとあたしの手から日向説明書を取り上げて、律くんは申し訳なさそうに眉尻を下げた。
言葉足らずではあるものの、どうやら代わりに持ってくれるらしい。
そして何故かまた、セットで恭也の舌打ちが聞こえてくる。
……なにがそんなに気に食わないかな。



