しかしすぐに表情を戻したなっちゃんは、ぱらぱらとマニュアルの最後のページを開き、あたしたちに「だからこれがある」と差し出してきた。


恭也に目線で促されたので仕方なくあたしが受け取って、どれどれと視線を走らせていると、みんなもあたしを覆いかぶすように、覗き込んできた。



「合意制ってのは本格的でな。このフィールドを使うには相互の了承の証に契約書が必要なんだ」


「契約書、ねえ……」



なにかを思案するように恭也がなっちゃんの言葉を反芻した。


その顔は珍しく真剣みを帯びていて、不思議に思ったあたしは首をひねる。



「どうしたの? 恭也」


「……いや」



何を考えているのか、恭也はあたしの質問に答えてくれない。


問いただしても仕方ないので、諦めて先生へ視線を戻す。


というかそんな危険な場所、わざわざ了承して使う人なんているのだろうか。



「ここはよくスター狩りの奴らが利用するんだ。上手く相手を挑発して話を作り、フィールドにいれてしまえばこっちのもんってな」


「スター狩り?」


「好んで他者のスターを狩ってまわってるタチの悪い奴らのことだよ。不思議と毎年必ず出てくるんだ、これが。お前らも一番手を焼くかもしれねえ」



スター狩り。


その言葉だけでも、お腹のなかにモヤがかかるような嫌なものを感じる。


それはあたしだけではないようで、メンバーの全員が眉間にしわを寄せてなっちゃんの話を聞いていた。