「り、律、くん」
「……ん」
どもってしまいながらもなんとか名前を呼ぶと、律くんは満足そうに目を細めた。
それだけで破壊的な顔にバッと目をそらすと、良い感じの雰囲気だったその場を一気にぶち壊すかのようにふたたび盛大な舌打ちが聞こえてきた。
「おいテメェ」
ちょっと待て、それはこっちの台詞だ。
せっかく良いムードだったのに!
いちいちことあるごとに、盛大な舌打ちかましてくるんじゃないわよ!
「残念だけど、あたし〝テメェ〟って名前じゃないので」
「あ゛ぁ?」
わあもう怖い!
霧谷くんの恐ろしい声をそのままスルーしようとすると、今度は舌打ちではなく突きさすような鋭い眼光があたし目掛けて飛んできた。
柄悪いな、ほんと!
「おいてめ……カノカ」
いつの間にか、こいつまであたしのこと呼び捨てにしてるし!
「っ……な、なによ」
「俺のことも名前で呼べ」
……え、なに?
もしかして羨ましかったの?
思わぬ言葉にキョトンと目を瞬かせると、天宮くんが飲んでいたオレンジジュースをブッと噴き出した。
「な、なにそれ〜! 面白すぎっ」
あはははっとお腹を抱えて笑いだす彼のとなりで、如月くんが噴き出したオレンジジュースを無言で拭く。
このふたりの関係ってなんだろう。
神宮寺くんが霧谷くんのお母さんなら、如月くんは天宮くんのお母さんみたいだ。



