「……あのなぁ。お前らいいかげん座ってくれよ。俺の話はいつになったら聞いてくれるんだ」
先生もどうやら相当疲れたらしい。
全身からため息を吐き出しそうな勢いで、ソファの背に腰かける。
「ああ……」
「そ、そうだよ。まずは先生の話聞かなきゃね」
ここぞとばかりに如月くんの横をすり抜け、あたしは放り投げられた先のソファでこちらを見物していた天宮くんの隣に腰を下ろすことに成功した。
よし、逃げるが勝ちだ。
怖すぎ。やっぱり選択肢は3に限る。
「カノちゃん、チョコ食べる〜?」
「う、うん! もらおっかな」
「はいっ口あけて。あーん」
天宮くんは皿に山を作っているチョコレートからひとつ摘まんで包みをあけると、天使の微笑みをみせた。
戸惑いながらもその笑顔に負けて口を開けると、コロンと口の中に転がってきた丸いチョコレート。
「ん〜〜っ!? なにこれ美味しい!」
「ふふ、でしょ? これね、イギリスの有名ショコラ店のチョコなんだって。 美味しいよねぇ、いくらでも食べれちゃうよねぇ」
「うんうん! 最高!」
ふわりと広がるカカオの良い香り。
舌触りが抜群で、その口溶けの良さとチョコレートなのにどぎつくない柔らかな甘さは荒ぶっていた心をすっかり落ち着かせてくれた。
今の今まで殺伐としていた状況をコロンと忘れて、にこやかに笑いあうあたし達を、呆れたように眺めている怖い連中。
さっきはとつぜん抱きつかれてびっくりしたけれど、どうやらここでの癒しは天宮くんだけのようだ。



