「……なんだテメェ」
抱きつかれたまま動けずにいるあたしの代わりなのか、どうやら苛立ちMAXらしい霧谷くんのドスのきいた声が背後で低く響いた。
いくら可愛いとはいえ相手が男の子だと確信したあたしはといえば、今にも沸騰しそうなくらい首まで真っ赤に染まっていた。
頬がピタッと触れているばかりか、ふわりと甘い香りが鼻を掠める。
押しのけることも抱きしめ返すことも出来ず、石像と化した棒立ち状態。
「あれ? カノちゃん、息してる?」
そんなあたしに気づいたのか、やっと離れてくれた彼は、今度は至近距離であたしを覗き込んできた。
「っ〜〜!!」
なんて、綺麗な顔なんだろう。
二重瞼を額縁としたくりっと大きなつぶらな瞳。
どこか幼さの残るその顔立ちは恭也たちとはまた違う端正さで、前にパリへ遠征に行った時に見たフランス人形を彷彿とさせた。
柔らかいミルクティカラーの髪にはひと房だけピンク色が入っていて、絶妙なアクセントになっている。



