「――次は新入生代表挨拶です。代表を務めるのは今年度マスターコース首席、姫咲花乃香さん。お願いします」


「はい」



名前を呼ばれて、静かに立ちあがる。


その瞬間、アリーナ内に集う新入生の突きささるような視線が八方からいっせいに襲いかかってきた。


興味と警戒。


一部には畏怖(いふ)も入りまじり、それは強い圧となって、あたしを飲み込もうとする。


……正直、新入生はもっと少ないものと思い込んでいた。


だから、あたしにとってこれは予想外の展開だった、と言わざるを得ない。


だって、これすなわち。



──ここにいる全員が〝天才〟だということなのだから。



いやはや、今の世の中どうなっているんだろうね?


こんなに沢山いるのに、なんであたしなんかが首席なのかもわからないし。


よりによって、新入生代表挨拶なんて……。


ああもう、こんなつもりじゃなかったのにな。



──まあ、それはともかく。


ここ〝有栖川学園〟において、あらゆる常識が通用しないのは最初からわかっていたこと。


入学そうそうイメージが悪くなるのもイヤだし、変に目立って厄介ごとに巻き込まれても面倒だ。


今は出来るかぎり息をひそめておくのがベストだよね。