「ああ、いた。勝手にいなくなるな恭也。心配するだろうが」
……恭也?
俺様男とは明らかに違う優しい声が聞こえてきて、あたしは一度返した体をふたたび戻して、声の方を見る。
こちらに駆けてくる人物の姿が視界に入った。
またもやあたしはその顔に魅入ってしまいながらも、目の前の金髪男とは対照的な銀髪に首をひねる。
恭也と呼ばれた彼に負けず劣らず端麗ながら、銀髪の彼はどこか大人っぽい色気のある顔立ちをしていた。
それに拍車をかけるような黒ブチ眼鏡の奥に見える黒い瞳は、どこか冷たくも柔らかい雰囲気を醸し出していて、思わずドキッとしてしまう。
「てめぇは俺の母親か」
「ふざけんなよ、なんで俺がおまえの母ちゃんしなくちゃいけないんだ」
このふたり、もしかしなくても友達なのだろうか。
今日初めて顔を合わせたはずなのに、やけに親交がはやい。
あたしがジーッとふたりの国宝的な顔を交互に見ていると、銀髪の彼はやっとあたしに気づいたらしく、ふと視線を下げて目を丸くした。
「ああ、君、さっきの……姫咲花乃香ちゃん」
「あ、名前、覚えててくれたんですか」
「おいお前、なんで俺にはタメ口だったくせにコイツには敬語なんだよ」
俺様も敬え、と横から口を出してくる恭也とやらを華麗にスルーして、あたしは銀髪の彼に笑顔を向けた。



