「そもそも天才にも見えねえな。バカの間違いじゃね?」
「はぁぁぁあっ!?」
とはいえ、さすがにこれにはカチンときた。
なんなのよコイツ!
礼儀ってもんを知らないの!?
日本人たるもの、最低限のマナーは身につけておくのが常識ってもんでしょう!
「バカっていう方がバカなのよ! バカ!」
「あぁ? 俺様がバカ、だって?」
その瞬間、あたり一帯の空気の温度が一気に下がった。
ギンッとまるで鋭利な刃のような眼光を注がれ、「ひっ」と体が縮こまる。
オレサマ?
オレサマって言ったよ、この人。
あんまり目の前にある顔が恐ろしかったものだから、つい頭の中でゲーム的ないくつかの選択肢が浮かび上がった。
1、回し蹴りを喰らわせる
2、土下座して謝る
3、逃げる
……よし、決めた。
ここはもう相手にしないで逃げよう。
1は恐らく後に倍返しで返されそうだし、2はとにかくプライドが許さないし、そうなるとどう考えても3しか答えがない。
下手したら、カリキュラムが始まる前に自滅して退学になりそうだもの。
「もういいです……! さようなら!」
かっこいい捨て台詞でもぶつけていこうか迷ったものの、この凶悪顔野郎相手ではどうにも躊躇われて。
こみあげてくる苛立ちを抑えながら、もう二度とこいつとは話すまいと踵を返し、ツカツカ歩き出そうとした時だった。



