「広いなぁ、ホント」



ぐるりと見渡すと、南西の方向に孤島に似合わないヨーロッパの小城のような塔が目に留まった。


ここからそう遠くない場所にあるし、位置的に考えても多分あれがマスター棟だろう。


なんだあたしってば、やっぱりちゃんと近づいてたんじゃない。


────……タンッ。


てっぺんから地面に向かって飛び、空中で一回転、そのまま軽々と地面へ着地する。



「ふぅ、いい風」


「っぶねぇな! いい風じゃねえよ!」


「っ、へ?」



とつぜん背後から投げかけられたドスがきいた声に驚いて振り返り、そこにいた人物にまた別の意味で驚いて目を丸くする。


露骨に寄せられている眉間のしわはやたらと深いけれど、それを差し置いても美形極まりない顔……。