「律」


「……なんだ」


「カノちゃんのこと心配なのはわかるけど、そのヒト締め上げたってなんも吐かないと思うよ〜?……それより、そろそろちゃんと向き合ってあげた方が良いんじゃないかなぁ」



僕にみんなの視線が集中する。


ニコッと笑ってみせると、恭ちゃんが苛立ったように舌打ちをして「向き合うってなんだよ」と吐き捨てた。


まったく……単細胞ってこれだからなー。


そんなこともわかんないんじゃ、カノちゃんのことは守れないよね。



「気づいてないんだ?カノちゃんが僕らを裏切ったってこと」



笑ったままそう言った僕に、これまで腕を組んだまま沈黙していたユキちゃんが厳しい目を向けてくる。



「……柚。さすがに言って良いことと悪いことがあるぞ」


「だって、事実じゃん?」



律も恭ちゃんもユキちゃんも、カノちゃんの表面だけを見ているんだ。


薄いベールの向こう側を覗こうとはせず、見えているものだけを信じて聞こえているものだけを信じている。