でも……。
「楽しそう、じゃない」
予測できない高揚感にふっと表情筋を緩めたそのとき、先生が見計らったようにこちらを振り返った。
そして、
「姫咲花乃香」
ポンッとマイクを放り投げられる。
それを片手で受け止めて先生と挑戦的な視線を交わしあったあたしは、高揚感の裏側に妙な予感のようなものを感じて背筋を正した。
「改めて、入学挨拶頼むよ」
ああ、挨拶。すっかり忘れてた。
そういえば代表挨拶の途中だったっけ。
いろいろ考えてはいたけれどこんな話を聞いた後……あたしが言えるのはただひとつだ。
「────みなさん!
学園生活、楽しみましょうね!」
きっとここにはあたしと同じように、日々に退屈していた天才たちが沢山いる。
その全てがぶっ壊されるような高揚感に背中を押され、あたしは飛びっきりの笑顔でマイクに向かって叫んでやった。