「ほんまにアホやな、あんたら」
あきれ声で扉の影から姿を現した男に、恭也の眉間に青筋が走る。
……結城哲平。
こいつが少し前から、外で立ち聞きをしていたことは気づいていた。
花乃香が言っていた『盗み聞き』。
俺たちがしていたことと何ら変わらない。
雪が青白くなっている日向を抱き直しながら、一歩前に進みでる。
「結城先輩、言われなくてもこいつらもちゃんと分かってますよ」
「いや、わかってへん」
結城は雪の柔らかい物言いを一刀両断する。
その瞳には強い意志が宿っており、ただ立っているだけでも貫禄を感じさせた。
さすが、三年間退学せずに有栖川で過ごしてきただけはある……らしい。
「……花乃香は、」
俺は迷いながらも、口をひらく。
「何に怒っていたんだ?」
「え、なにってそりゃ……僕らが盗み聞きしてたことでしょ?」
結城が答えるよりも先に、柚がしょぼんと肩を落とす。
たしかに、それはある。
それは、俺にもわかってる。
でも、さっきの花乃香はそれだけではなかったような───そんな気がするのだ。



