……恐らく、あえて。
「あえて、ソロを選んだのはなんで?」
哲平は自らそれを選んだんだ。
進めば進むほど険しくなっていくイバラの道を。
「なんで、か。んま、" あえて "言うなら俺が平和主義者だから、だな」
「平和主義者」
「ん。闘いたくないんだよ、俺はさ」
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ、哲平の顔に悲しげな翳りが浮かんだ気がした。
それは瞬きの間に消えてしまったけれど、きっと気のせいではないのだろう。
「……平和主義者なら、あたしと一緒ね」
あたしの知らない哲平のこれまでの二年間は───彼の人生は、決して甘いものではなかったはずだから。
「この学園でんなもん通用せんけどな」
哲平は、ははっと白い歯を見せて笑った。
応えるように「そうね」と苦笑して、あたしは教室の扉を開け、振り返る。
「じゃあまた」
「おー、またな。お嬢」
「" さん "が抜けただけじゃない」
「それもアリやろ」
なにがアリなんだか……全く。
自然と笑みが零れながら、あたしは今度こそ教室をあとにする。
後ろ手に扉を閉めて、手に持った契約書を見つめた。
存外時間がかかってしまったけれど、ここからが勝負どころだ。
けれど、まずは────。



