「ひーなた」



コアラの赤ちゃんのように、がっしりとお腹にへばりついている日向を見下ろして、あたしは苦笑した。



「ごめんね、寂しい思いさせちゃって」



あたしが寮で寝込んでいる間、日向とはほとんど顔を合わせなかった。


どうやらユキちゃんに熱が下がるまでは我慢だと言い聞かされたらしい。


つねにベッタリな日向が一週間も我慢するなんて、あたしとしてはびっくりだけど。


でも、相当ストレスが溜まっていたんだろう。


今朝、日向はまるで3年ぶりの再会とばかりに、号泣しながら抱きついてきて、それから離れようとしないのだった。


「あたしは元気になったから、もうなーんも心配ないよ〜」


「なにが心配ないだよ。つい昨日まで魂の抜けたカカシみてぇにボロボロだったくせに」


「魂の入ったカカシをあたしは見たことがないから、その喩えはよくわかんないや。ごめんね、恭也」


「まともに返すなよ。ツッコめよ」



あぁ、今ツッコミに回らないといけない場面だったんだ。


ごめんね、あたしってば病み上がりだからそういうの考える余裕ないんだよね。