「……なにやってんだ、お前らは……」
谷底から湧き出るような深いため息をついたユキちゃんが、いつものように頭を抱える。
そう、これは、いつものこと。
……通常営業である。
柚くんがお腹を空かせるとこのように凶暴化するのも、それによって及ぶ被害をなんなく律くんが交わすのも。
「だいたい律が全然起きないから、僕の朝ごはんの時間が少なくなったんじゃん! 30分しかなかったんだからね!?」
「……30分もあれば充分だろ」
「なにいってんの!? ご飯は最低でも1時間かけて食べるもんなんだよ! お腹いっぱいになるまで!」
ふたりのやり取りに、恭也が「くっだらねー……」と眉を八の字に寄せる。
……まぁ、たしかに、くだらない。
でもこの小柄で華奢な体型のくせして、底なし沼のようなお腹を持った柚くんからしたら、きっと一大事なんだろう。
とりあえず、なにか口に入れていないと落ち着かない性分らしいから。
仕方ない、とあたしはユキちゃんを見た。
視線に気づいた彼は、やれやれと首を振りながら、肩から下げたバックの中を漁る。
出てきたのは一本のペロペロキャンディ。



