「おいコラ、チビスケ。人にモノをもらったら『ありがとう』だろうが」
ソファに偉そうな体勢で寝転がっていた恭也がよっこらせっと起き上がる。
「それをあんたもね」
この男がいつでもどこでもユキちゃんとセットでついてくるせいで、日向はなかなかそこから先を超えられない。
どの口が言うのよ、と恭也にツッコミを放って、あたしはため息をついた。
「ところで、なっちゃんは?」
今日この場所にあたしたちを呼び出したのはなっちゃんだ。
なにやら大切な話があるとかなんとか。
部屋を見渡すけれど、その姿は見えない。
「まらきてらいよ〜。らんかれえ、僕たちの……」
「柚、汚い。口に入れたまま喋るな」
柚くんがクッキーを口いっぱいに頬張りながら答えようとするのを、律くんが静かに諭す。
ふたりはダイニングで大量のお菓子を目の前に優雅なティータイム。
律くんはまったく食べている様子はないから、柚くんに付き添っているだけだろうけど、相変わらず面倒見は良いらしい。
その時、エレベーターが到着する音がなった。
「悪い、遅くなったな」
そう言って入ってきたのはなっちゃんだ。
実際こうして会うのは初日以来。
あの日と違って有栖川学園の紋章が入った黒いジャージを身に着けているなっちゃんは、若さも相まって先生というより生徒に近いような気がした。



