マスタールームで疲れきったように寝ていた日向を思い出すと、胸が締めつけられる思いがした。
「……カノカ。泣いてる」
「っ……ね、日向?」
あたしの頬を流れた涙を小さな手で拭ってくれる日向に、そっと語りかける。
辛いとか苦しいとか我慢だとか、きっとそういうものは日向は一切感じていない。
感じていないというよりも、 感じられないのかもしれない。
それを仕事として、心を抹殺しながら今まで続けてきた日向にとっては"当たり前"のことだから。
けれど、あたしよりも遥かに小さい子どもが、ここまで色を失った瞳になるなんてあってはならないことだ。
ううん、そんなの、あたしが許さない。
日向の心を奪うなんてこと、絶対に。
「……あたしがそばにいるから」
「……?」
「ずっとそばにいるから、日向はちゃんとあたしを見ていて?」
行き場のなくした心を引き戻すのは、とても難しい。
そうならないために、あたしは日向を守っていかなくちゃいけない。
守りたいと思う。
こんなに小さな手のひらだ。
誰かが守ってあげなくては、この子はそのうち直に自分を保てなくなってしまう。
……昔のあたしのように。
空いてしまった穴は戻らないのだ。
決して、埋まらない。
それはいつも胸をすり抜けて、冷たく冷たく溶けることなく凍らせていく。
そんな思いを日向にはさせたくない。



