「……り、律くん……ほんとに喋れるの?」
「まぁ、多分」
嘘だ。待って。ちょっと待って。
たしかにあたしも、さまざまな文献で動物と話が出来るという事例報告は何度か見たことがある。
けれどそれは科学的にも証明されていないものばかりで、現実的に信じられているかといえば異論を唱えるものが多いのが事実だ。
それをあたしは今、目の前で見てしまったのだろうか。
しかも心を通わせるだとかそんな胡散臭いことではなく、まるで人間と話しているかのように……しかも律くんにしてはとても流暢に……ごく自然と会話をしていたわけで。
「……恭也、あたしはどうしたらいい?」
「俺に聞くな」
だって、なんだかんだあたしの心情をいちばん理解してくれているのは恭也なような気がしてきたから。
「行こう。……花乃香」
そんなあたしたちの混乱を知る由もなく、律くんはなにごともなかったかのように熊について歩き始めた。
「いやぁ、律ってば相変わらずだね〜」
「……ヒグマと話したのは、初めてだった」
状況を飲み込めないまま取り残されたあたしたちは、ただただ呆然とするしかない。



